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黒い人(投稿作品) ※長文

公開日: : 不思議な話 |401 view

ようやく気持ちが落ち着いたので、厄落としの為にも書いてみます。
長文な上にあやふやな所もあり、ぐだぐだになると思うので、嫌いな方はスルーでお願いします。

私が嫁いだ先は四国の某所。
主人の実家は農業をしていて、自分達が住んでいる場所からは車で20分程度なので、時々手伝いをしに行っていました。

その日は暖かい日が続いていた初春頃、椎茸のこま打ちの手伝いをして欲しいとの連絡があり、こま打ちをする場所は主人の実家から車で10分程かかる山の中なので、まっすぐそこへ向かいました。

到着し、ドアを開けて早々、思い切り咳き込んでしまいました。
むせかえる様な甘い臭いが、いっぱいに漂っていたからです。
大量の砂糖を煮詰めた様な、そんな臭いでした。

山の中とは言っても、登山道を少し入ったらすぐ隣にある開けた場所ですし、麓には民家が数件あるので、そこで何か調理をしているんだろうと思いました。

しかしそれにしてもあまりに酷い臭いだったので、思わず義母に言ったのです。
「凄い臭いですね。芋煮会でもしてるんですかね?」
義母はキョトンとした顔で言いました。
「臭い?何の臭い?何も臭わんけど?」

いやいや!そんなわけないだろう!とつっこみそうになりました。
こんなエグいくらい臭ってるのに!そう思い、原木を運んでいた義父にも同じように聞きました。
しかし義父も首をかしげて、何も臭わないと言うのです。

からかわれてるのか意地悪をされてるのか全くもって府に落ちませんでしたが、失礼な話、年を取ると色々な感覚が鈍くなると聞くし、嗅覚が衰えたのかな、と勝手にそんな事を考えていました。

それからすぐにこま打ちの作業を開始し、順調に進んでいったのですが…
作業が進むにつれ、臭いがどんどん強くなっていくんです。
数十本終えた所でとうとう気分が悪くなり、一息つこうと持参した水筒のお茶を飲み、そして何となく周りの景色をぐるっと見た時でした。

思い切り心臓が波打ちました。

私の数十メートル後ろの樫の木の側に、とてつもなく大きく、真っ黒な人がこちらを向いて立っていたから。

正確に言うと、半袖で足先まですっぽり隠れる様な真っ黒のワンピースを着た、真っ黒なとても長い髪をした人でした。(両眼とも視力は1.5ですが、顔は髪に隠れて見えませんでした)
遠目から見ても優に2メートルは越えていて、人にしては不自然な大きさに感じ、あっけにとられて視線をそらせませんでした。

私がその存在を確認して一息おいてから、その人はゆらりと体を揺らしながらこちらに進んで来ました。
はっと我に返り、今度は恐怖しました。
不自然に感じたのは、大きくて黒いからだけじゃなく、手が異常に長かったんです。

半袖から伸びる腕は関節が無いように見え、その人の体が揺れると、合わせるようにふにゃりと揺れました。
手の甲は地面についていて、ずるずると引きずっていました。

あまりの異常さと恐怖に体が硬直して動けませんでした。

少しずつ少しずつ、しかし確実に近付いてくる異様な存在に、全身が毛羽立ちました。
そしてそれと同時に、いきなり目の前の景色がぶれ、頭に強い衝撃を受けました。
自分の体が前のめりに倒れ、全身の力が抜けていくのがわかりましたが、しかし一体何が起きたのかはわかりませんでした。

「………ぁぁああ!!」

…あれ?悲鳴?誰の?お義父さん?何で?あれ?何でだっけ?何で寝てるんだっけ?何してたんだっけ?
意識が朦朧としてたんだと思います。
思考が働かず、体は全く動きませんでした。

「…て!ゃめてお母さん!痛い!痛いよ!!やめてくれ!!」

お義父さんの声だ!!何だ!?
はっきり意識が戻ったのはどのくらい時間がかかったのかわかりませんが、義父の悲痛な叫び声ではっとしました。
後頭部がズキズキと傷み、目の前がチカチカしてうまく起き上がれませんでしたが、手で頭を押さえなんとか起き上がりました。

「お願いだからやめてくれー!!」

声がする方を振り返ると、信じられない事に、義母がこま打ちをしていた金槌で義父を滅多打ちにしていたのです。

ふらふらでしたが、必死に義母にしがみついて止めました。
ひらすらに、やめて下さい!ともう泣きながら繰り返し叫びましたが、それでも義母は義父を殴る事を止めようとはせず、何か訳の分からない事を喚いていました。

「おんしのたまもざんじくうちゃるきぃ、まっとってなぁ」

義母がいきなり私の方を振り返り、笑顔でそう言いました。

また全身が毛羽立つのを感じました。
義母が恐ろしいのもありましたが、それ以上に恐ろしいものが私のすぐ後ろにあるような気がしたから。

私は後ろを見れませんでした。
頭の痛みを忘れる程、体が硬直しました。

「ほれ、、くう、の、おらうう、、」

耳元で声がしました。
女のような男のような、子供のような老人のような…。
とにかくありとあらゆる複数人の声を、同時に出したような声でした。
それがとても人間とは思えず恐かった。

そしてその声が聞こえた瞬間、意識がぷつりと切れました。
目が覚めた時は病院で、主人が真っ青な顔で私の手を握ってくれていました。

主人の話によると、私と義父母3人が倒れているのを下山してきた人が見付けて、救急車を呼んでくれたそうです。
私が受けたあの衝撃は、やはり義母が私の頭を金槌で殴ったものでした。
石頭が幸いし、大きなたんこぶで済みましたが。

義父は何度も殴られた事もあり、頭蓋骨陥没骨折の全治6ヶ月という大怪我でしたが、後遺症も無く、今は普通の人と何ら変わりなく生活しています。

義母は亡くなりました。

私が意識を取り戻す1時間程前に、誰にも気付かれる事なく義母は病室から忽然と姿を消してしまったそうで、その日は親戚の方とご近所の方が夜遅くまで探してくれましたが見付からず、翌日捜索願いを出しました。
そして2週間後、あの山のあの場所で、頭だけが地面に埋まった状態(正座して前に倒れ込んだような格好)で亡くなっているのが発見されました。

直接の死因は心不全だそうですが、調べた結果亡くなってから頭が埋められたようで、何故そのような状態になったのかは今でも不明です。
動物が掘って埋めたのか、あるいは誰かが悪戯で埋めたのか、色々な線で考え調べたようですが、わからないままです。

警察の話によると、義母は病室から抜け出した後、あの山に歩いて行ったようなのです。
麓に住んでる方々が見掛けたみたいで、証言されたと言っていました。
毎日あの山や付近を捜索していたのにも関わらずこのような結果になってしまい本当に申し訳ない、と警察の方が俯きながら仰っていたのが強く印象に残っています。
(暴行の件は、やり過ぎだけど夫婦喧嘩、という事で処理されました)

そしてその事件から1年後、私は妊娠しました。
義父に報告しに行った時、そう言えばあの時甘い臭いがどうこうって言ってたよね?と言う話になり、義父がいる地域ではこんな話と唄があると聞きました。

『山いっぱいべっこう飴の匂いに包まれたら神様が降りてきた証、翌年は豊作になり、健康な子供が沢山生まれる』という話と、『くろおかみさまたまくいわらう、こしょこしょこしょ、もーまーあかごをつれてきわらう、こしょこしょこしょ、わっはっは』という遊び唄です。

『くろおかみさま』とは『黒い神様』で、この唄は『黒い神様が魂を食べて笑ってる、もうすぐ赤ちゃんを連れて来て笑うだろう』という意味なのだそうです。
少し恐いですが、終わりと始まりを表した唄で、主人が赤ちゃんの頃も義父母がよくこの唄であやしていたそうです。
主人もそう言えば聞いた事あるかも、と言っていました。(こしょこしょの部分で脇の下をくすぐってあやすとの事です)

私はその話を聞いた時、あの甘い臭いと共に、黒い人を思い出しました。
しかし臭いもその人物も、義父母は感じてないし見てもいません。
それに私は違う地域に住んでいます。
あの出来事とリンクさせる事は非現実的だし間違いなのかもしれませんが、事実不思議な事が多々あったので、関係ないと言い切れないでいます。
どうして義母はあんな行為をしたんだろう、もしかしたらあの黒い人は神様で、義母を操ったのではないか、それとも神様の気配で気が狂ってしまったのか、それに耳元で聞こえた言葉は「それ、食うの、貰う」じゃないのか…
そんな考えがぐるぐると無限に沸くのです。

警察に色々と聞かれたあの日、黒い人物の事は言いませんでした。
言ってはいけないような気がした、というか、言葉が喉に引っ掛かって口に出す事を体が拒絶した、という表現の方が合ってるかも知れません。
何故かはわかりませんが。

主人にも誰にも言っていませんし、この先誰かに言うことも無いと思います。
ただ、矛盾になりますが、吐き出したい気持ちもあり、無責任ですが直接関わりの無い誰かに聞いて欲しかった。

事件の翌年、作物が本当に豊富に穫れ、出生人数が前年の倍になったのは偶然なのかどうか一生わからないままなのだと思いますが、家族を大事にしていた義母の気持ちは痛いほどわかるので、その意思を継いでいきたいです。

子供が就学し、最初に書いたように厄落としの為にも書きました。
長文乱文、失礼しました。
そして読んでくれた方、ありがとうございました。

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Comment

  1. 匿名 より:

    高知の方の言葉か?この話は知らんが豊作のクスノ神なら聞いたことある

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